Q
Tさんの母は、現在、施設に入所している。一か月前にTさんが会いに行ったときは、車椅子で移動していたが、元気だった。家に帰りたいと大騒ぎすることもなくなり、Tさんも、できるだけ会いに行くつもりでいた。ところが、その矢先、母のいるユニットでコロナが発生し、面会ができなくなってしまった。面会規制解除を知らせる施設からの連絡を受けた時には、「お母さんの状態が悪く心配されます」と添え書きもあり、Tさんは早速、施設に駆け付けた。母はボーっとしながらも、思っていたよりは元気だったが、担当者に聞けば、一週間以上寝付き、一時は起き上がれず食事もとれなかったとのこと。施設に入所してからコロナ罹患は3回目。気丈だった母も衰えが目立ってきた。現在85歳になる母とは、若い頃はぶつかることが多かったTさんであるが、最近は、良好な関係になってきている。残された母との時間は貴重で、Tさんは後悔のないように過ごすと決意している。そのための助言を今一度タロットに求めることにした。
K・Tさん 50代 東京
A
(1)現状
現状 |
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①現状に出たのは「力」である。Tさんは、すぐさま、少女が自分で、獅子が母であると思った。百獣の王の獅子のような強さがあった母は、生活力があり気が強く、とにかく自分を押し通そうとして周囲を辟易とさせてきたが、最近は一人娘のTさんに心を開き、Tさんがかける言葉を喜んでくれるようになった。かつては母をなだめる時に、嘘も方便で思いつくことを適当に言ってその場を収めることも多かったが、今は母に心から感謝の言葉が言え、母からも労いや応援の言葉が返ってくるようになったのである。30代の頃は、母との喧嘩で不安定になるTさんを心配した友人が、母との絶縁を勧めてくれたこともあったほどだが、その時には想像もできなかった奇蹟のような良好な関係ができている。やはり頑張ってきてよかったとしみじみ思う。
(2)経緯
経緯 |
現状 |
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②経緯は「正義」で、Tさんは、母が施設に入った頃からの日々を思い出した。元気だった母は田舎で一人暮らしをしていたが、何度か転倒したことを機に、地元の施設を利用せざるを得なくなった。その後、一時利用では収まらなくなり、正式に入所することになったが、本心では望んでいなかったので、何度も帰りたいと大騒ぎして、勝手に家に帰ろうとしたり、Tさんに一日に何十回も帰りたいコールをしたりしてきた。また、コロナで世間が騒がしかったときには、母の感染がなくても、Tさんが会いに行きづらかったり、施設側から断られることもあった。「正義」のカードが示すように、次々に突き付けられる現実の問題に向き合いながら、かろうじてやりくりしてきた感じがして、Tさんは思わず納得した。
(3)展望
③展望の「隠者」Rは、現在、母を担当する施設のケアマネジャーに見えた。一時利用時は女性のケアマネジャーだったが、正式入所後は男性が母の担当になったのである。その男性のケアマネジャーは、母のヒステリックな言動や瞬間湯沸かし器的な振る舞いにとまどっているようだった。しばらくは、母への手の差し伸べ方には勝手がつかめず、苦労されるかもしれない。
(4)
④「隠者」Rの注目カードは「月」Rとなった。色の違う犬が逆さになって向き合っている。Tさんは、母は気が強いので、施設では、身内のように甘えられず、寂しいのかもしれないと思った。だが、母は、「施設で怒鳴ってしまった。どうしよう?」と、Tさんに相談することも多くなっているので、ひょっとしたら母は施設の生活に慣れて、親しさから感情をあからさまに出して、周囲の人と対立してしまうのかもしれない。いずれにしても感情の起伏が激しい母のことで、施設の方々、とりわけケアマネジャーには負担をかけそうだ。申し訳ないと思う。
(5)
⑤「隠者」Rの対策カードは「愚者」で、母に会いに行くTさんの姿である。母との関係が劇的に良くなっているので、とにかく積極的に駆けつけるようにすれば、母は大喜びし、ケアマネジャーにもほっとしてもらえるに違いない。
(6)
⑥「愚者」の注目カード兼「月」Rの対策カードは「太陽」である。絵柄の人物は、Tさんと母で、母にありがとう!と感謝を伝えている場面に見える。実は、Tさんは家業を受け継ぐために母に非常に厳しく育てられた。病気で入退院を繰り返していた父の分も背負っていたため、母の厳しさは容赦なく、Tさんは何度も反発した。でも、大人になって人生を振り返ると、母の厳しさが自分の基盤を作ってくれたことがよくわかり、感謝の気持ちが湧き起こるようになった。老いた母にその思いを伝えようと思う。母の心が喜びに包まれれば、Tさんが帰った後も和やかでいることが多くなり、施設の人とも穏やかなやり取りがしやすくなると思えた。
アドバイスカードは「恋人」である。みんなが和やかに話をする光景が目に浮かぶ。Tさんは、何かあったら、施設の人と率直に話し合い、双方にとってよい関係を保っていきたいと思った。母とも積極的に語り合うようにしていこうと思った。高齢の母にとって、元気の源はTさんとの会話なので、できる限り足を運んで語り、できないときは電話をかけようと心を新たにした。
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