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イシス学院は、カバラー、タロット、アストロロジー、アロマテラピーという形で現代に伝わる古代密儀の伝統を学ぶ魂の学校です。

第209回 次兄が導師を勤める父の葬儀にどう取りむべきじか

最新のケーススタディ 2014年4月25日号 掲載

Q.Tさん兄弟は三人とも僧侶である。諸事情ですぐ上の兄(次兄)が父の後継者となり、長男と三男のTさんはご縁のあった寺を継いでいる。同じ仏に仕える身であるが、次兄は地上的なものへのこだわりが強く、気性も激しいので、親戚とよくぶつかり檀家ともめ事も多い。子供のころからいじめられてきたTさんにとって、次兄は苦手な存在である。この度、父が老齢で亡くなり、次兄が執り行う父の葬儀がまもなく始まる。心情的に快く思えない次兄ではあるが、Tさんは尊敬する父の葬儀には穏やかな心で臨みたいと思っている。どんな心構えで行くとよいだろうか。

I・Tさん 50 千葉

A. (1)

 現状
 

「審判」では、人々が手を合わせて、心静かに天に祈りを捧げている。大勢の人が集まって旅立ちを見送っている様子から、Tさんの父は僧侶としても、人間としても優れ、人々の敬愛を受けてきたことが見て取れる。Tさんも尊敬する父の旅立ちをしっかり見送るつもりでいる。だからこそ、折り合いの悪い次兄と一緒でも、葬儀の間は心穏やかに過ごそうと思っているのだ。カードは、Tさんの強い思いをよくあらわしている。正立なので、旅立つ父も喜ぶよい葬儀ができるだろう。

(2)
 経緯 現状
 
自信を持って堂々としているはずの「戦車」が逆向きである。Tさんは、このカードを見て、これまでの自分であると思った。次兄と対照的なTさんは、控えめでおとなしい性格である。次兄が無理を言ってくると、衝突することで生じるトラブルを先に考えて、衝突を避けようとする。次兄と顔を合わせることがおっくうで、また横暴に振る舞うのではないかと気が滅入る。「戦車」らしくなろうとしても、なれないでいるTさんの心境がよくあらわれている。

(3)
経緯 現状 展望
   
展望は「力」R。暴れるライオンをうまく手なずけられない少女の様子も、Tさんには手に取るようにわかる。大切な父の葬儀なのだから穏やかに過ごそうと、心で決めていても、実際に次兄と顔を合わせたら、この通りになってしまう恐れがあることは容易に想像できる。次兄の勢いに煽られて気が動転すると取り乱して、僧侶としての本来あるべき振る舞い見失いかねない。カードを見ながら、Tさんは、難しい兄弟であっても、僧侶としての本分を忘れてはいけないと肝に銘じる。

(4)
経緯 現状 展望
   
 
  (4)
「戦車」Rの対策カードは「運命の輪」である。運命の輪を脱して上から見下ろす生き物は、この世から旅立った父の姿である。その父を輪から見上げるのが右側の生き物のTさん、輪の上方よりは下方の地上に関心を持つのが次兄であろう。カードより、Tさんが一番目を向けるべきは父の方である。旅立った父がどんな思いで息子たちを見ているか、何に心を痛め、何を託そうとしているか、Tさんは父を尊敬するゆえに、父の心の内をよく知る。葬儀の場では、その父の思いをしっかり受け止めることだ。 「戦車」Rと「運命の輪」は輪で親縁している。Tさんは「転法輪」という言葉を思い出した。父の思いを受け継いでいくことは、法輪を回していくこと。いつまでも次兄のことを気にする自分では恥ずかしい。「目先のことに翻弄されないで、しっかり僧侶としての本分を果たしなさい。」と父の声が聞こえた気がした。

(5)
経緯 現状 展望
   
   
   (4)   (5)
「力」Rの対策カードは「教皇」となった。この人物は、Tさん兄弟にとっての父である。教皇が弟子に教えを授けているように、父はTさん兄弟に仏の道を教えて来た。 Tさんは次兄との今後のありかたを心配しているが、父の遺志を拠り所にして、次兄との関係を築くようにしてはどうだろうか。同じ血を分けた兄弟として見る以上に、父の教えを受け継いだ僧侶としての自覚を持つのである。父の遺志を介して次兄とつながると考えれば、Tさんも冷静に対応できそうである。

(6)
経緯 現状 展望
   
     
 (4) (5) (6)
「教皇」の注目カードは「悪魔」で、このカードも「教皇」と同じ構図を持ち、Tさんは同じメッセージをカードから受け取った。下の二人の小悪魔が自分と次兄なら、中央にどっしり立つのは父である。父の意向を遡れば、仏様の教えにたどり着く。一番身近な父が残してくれた教えとつながることは、仏の道に通じる。本当に大切なのはこれだと思い至った。 アドバイスカードは「神の家」である。このカードは僧侶に最もふさわしい。地上に生きる人間として、僧侶も多くの悩みを抱えるが、長く受け継がれてきた仏教の教えには人が幸せに生きていく智慧が一杯詰まっている。僧侶はそれを生きた智慧にすること、その智慧で寺を活かし、人を活かす役割がある、それは父の教えでもあったとTさんは心を新たにした。

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